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平成25年度入学式式辞

本日、平成25年度入学式を挙行できますことは、本学にとりまして誠に大きな慶びであります。
入学生はもとよりご列席の御両親、御親族の方々のお喜びはいかばかりかとご拝察し、心よりお祝いを申し上げます。また、新入生諸君には五千名を超える教職員、在校生を代表し心から歓迎の意を表します。
東日本大震災津波の大災害を受け早二年が経ちました。復興は遅々として進まず、今なお不自由な生活を強いられている方々にお見舞申し上げ、一日も早い生活の再生をお祈り申し上げます。
本学は、発災直後から県と連携して災害医療を全県で一元的に管理するシステム「いわて災害医療支援ネットワーク」をいち早く構築しました。結果、当時大混乱していた災害医療を、速やか、かつ、効率よく確立出来た事は、日本のみならず世界の災害医療モデルとして注目されました。この経験を共有する事を目的に先月、WHO主催の「大災害からの医療分野復興に関する国際会議」が矢巾キャンパスを会場として、約二十カ国、国際連合、各種国際医療団体の代表約100名が参加して開催されました。岩手また本学からの主張が色濃く反映された「ステートメント」が世界に発信されたところです。この声明は本学ホームページに掲載されています。また、本学敷地内に「ドクターヘリ基地」がすでに完成し本格運用が始まり早1年が過ぎました。休む暇もなく大活躍しています。また、「災害時地域医療支援教育センター」が完成し、昨日落成式を挙行しました。全県の医療情報を一括管理する機能を有し、災害医療、こころのケアのセンターであるばかりでなく、完全免震、独自のライフラインを完備し、大災害時の司令塔となり、広域災害においては、日本の拠点となる建物として整備しました。
入学生諸君に申し上げます。改めて入学、誠におめでとう。諸君は本日から岩手医科大学の学生として、医師、歯科医師、薬剤師そして研究者への道に進む第一歩を踏み出しました。その感激を忘れることなく、今後勉学に励むことを希望します。また、諸君は災害復興、医療再生を実践しているその真っただ中に入学しました。災害医療は「究極の総合医療」であり「本来あるべき医療」とも言えましょう。そして、医、歯、薬が連携し、大学を挙げて取り組まなければならない医療の根幹をなすものです。諸君はまさに生きた医療を実践の中から学ぶ事が出来る状況下に入学出来た事を感謝すべきです。そして、傍観者ではなく、自らが関わって実践して行くことを通じて諸君自身が大きく飛躍して行って頂きたいと願っています。
諸君には、本学の「歴史」と「建学の精神」を知って頂かなければなりません。本学は、明治三十年、三田俊次郎先生によって創立された私立岩手病院、医学講習所を源としています。今日まで百十六年もの長き歴史をもつ伝統ある大学であります。明治維新から間もなくの時代であり、日本が近代国家に生まれ変わろうとしている時代です。日本で初めての大学「東京帝国大学」が発足したのが、明治十九年、二番目の「京都帝国大学」が発足したのが明治三十年ですから本学と同じ歴史ということになります。歯学部は、昭和四十年国公私立を通じ北日本初の学部として発足しました。さらに、平成十九年薬学部を開設し、以来、医、歯、薬三学部を有する医療系総合大学として発展を遂げつつあります。先月、薬学部の初めての卒業生を輩出しました。新設の薬学部であるにもかかわらず、全国100を超える国、公、私立、全ての薬学系大学の中で国家試験成績は十指に入りました。誠に喜ばしいことです。
現在、本学は歴史的大事業である総合移転整備計画を進めております。新矢巾キャンパスの完成によって学部の垣根を越えた統合講座をスタートさせました。この試みは日本のみならず世界にも類を見ない特色ある学部を超えた教育、研究体制として注目されています。
また、一昨年より研究が開始された7テスラ超高磁場MRIは次世代型の最新の制御機器を備えた世界第一号機です。世界各地との共同研究が始まっています。諸君たちが卒業を迎える頃には矢巾キャンパスに最新鋭の千床規模の附属病院本院と、現在の内丸地区には高度先進外来機能を有する内丸メディカルセンターが整備され、大いなる飛躍が予定されています。
諸君は、医療系専門職業人となるべく本学に入学しました。医療に携わる以上、病める弱者の立場に立ち、その気持ちがわかる豊かな人間性が求められます。それを裏打ちする教養と社会性、人間関係の構築は必須の素養であり、人々から信頼される社会人であること、これこそが本学の建学の精神である「医療人である前に誠の人間であれ。」の意味であります。
一方、弱者への「思いやりの心」があっても、最新の知識や技能なしには高度医療の実践はできません。その意味で、十分な知識と技術を習得することが求められます。これからの大学での勉学は、将来諸君たちが診ることになる患者さんに対する「義務」であります。
医療系複数学部を有する大学は少なくありません。しかし、医学部、歯学部、薬学部が同じキャンパスに学ぶ環境を有しているのは本学のみです。学部の垣根のない教育環境の下、患者中心の医療、チーム医療の根幹を学び、「医療人である前に、誠の人間であれ。」の言葉の重みを胸に刻み、学生生活を通じ、医療人としての基本である、人格?人間形成に努めて頂きたいと思います。
次に、大学院に入学された諸君に申し上げます。
医学、歯学、薬学、医療、生命科学の進歩は極めて早く、今の常識があっという間に非常識になるほどです。その意味で生涯学習は極めて重要であります。大学院における研究を通じ、自らが生涯学び続ける事ができる手法を修得することは、誠に意義あるものであります。諸君の賢明なる選択に敬意を表したいと思います。大学院は、最高学府の最上位に位置するものであることを自覚し、これから始まる研究が所期の目的を達成し、将来の国民の福祉、患者の幸せのために実り多きものになること、そして、諸君が立派な指導者に育って頂く事を期待しています。
最後に、被災された多くの方々や国民は、諸君たちが自立した医療人に成長し、一日でも早く医療の有能な担い手として自立してくれる事を望んでいます。この国民の負託にこたえる意味でも、勉学に励み有意義な学生生活を送られることを切望します。そして、被災県が復興再生し、岩手医科大学が諸君とともに限りなく発展することを祈念して式辞といたします。

(平成25年4月9日 岩手県民会館)