解剖学講座 [人体発生学分野]
解剖学とは、生体の構成単位である器官、組織、細胞の構造と機能を結びつける学問分野です。解剖学講座 人体発生学分野では、生物の『形』がどのようにして作られていくのか、その『形』にどのような意味があるのかを、形態学的な手法と分子生物学的な手法を駆使して研究しています。教育では、肉眼解剖学に関わる領域と発生学を担当しています。
講座?教室からひとこと

木村英二 教授
生物の『形』がどのようにして出来上がっていくのか、その『形』にどんな意味があるのかを知りたいと思っています。そのために肉眼解剖学の知識をバックグランドとして、様々なバイオ?イメージング法と分子生物学的手法を用いて、主に小型魚類のゼブラフィッシュの胚を用いて、胎生期の初期から血管系の形成過程を観察して明らかにしてきました。そして現在これらの『形』づくりが、どのようなメカニズムで制御されているのかを明らかにするべく研究を進めています。また、成体における器官の『形』と機能の関連性や、『形』のバリエーション(破格)に関しても研究を進めています。教育では、学生の解剖への学習意欲を存分に満たして、その先の大きな飛躍につながるよう指導していきたいと思っています。
講座?教室の基本理念
- 教育
- 肉眼解剖学実習は、学生の医師へのモチベーションを高め、心構えや人の尊厳を考えさせる上で極めて重要です。実習を通じて、人の尊厳について考察し、また自ら主体的に学び、それを検証?考察できる学生の育成を目指しています。もっと勉強したい、解剖したい、研究したいという学生の意欲を可能な限り満たせるよう、学生自らが主体的に学修できる十分な機会(環境と時間)を提供します。
- 研究
- 生物の『形』がどのようにして作り出されているのか、その『形』にはどんな意味があるのか、生命現象のダイナミクスをワクワク?ドキドキしながら明らかにしたいと思っています。そのために全身の細胞の細胞膜に赤色蛍光(mCherry)を発現する遺伝子組み換えゼブラフィッシュを新たに作出し、この系統を用いて、ゲノム編集技術のCRISPR/Cas9法で標的遺伝子を破壊し、その影響をイメージングにより評価可能な実験系を確立しています(下図参照)。現在、脳血管形成への関与が想定される遺伝子群の破壊体の作成を進めています。
Tg(bactin:mCherryCAAX) & Tg(flk1:EGFP) の受精後2日目胚の頭部 血管内皮細胞で緑色蛍光(EGFP)を、全ての細胞の細胞膜で赤色蛍光(mCherry)を発現させて生きたまま内部構造を可視化
主な研究内容および診療内容
- 初期血管系の形成過程の形態学的?分子生物学的解析(木村?及川?佐々木)
A) 中脳-後脳境界(MHB)形成が脳血管形成へ与える影響の評価
B) 眼胞形成が頭部血管形成へ与える影響の評価
C) 脳血管を形成する血管内皮細胞の起源の解明
D) 頭部における動脈性?静脈性血管床の分化制御メカニズムの解明 - Thiel法と通常のホルマリン固定したご遺体の比較検討(金澤?及川?木村)
- 霊長類と両生類における『手』の機能形態学と神経科学(中野)
(参考論文)
Kimura E, Deguchi T, Kamei Y, Shoji W, Yuba S, Hitomi J. Application of infrared laser to the zebrafish vascular system: Gene induction, tracing, and ablation of single endothelial cells. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2013; 33: 1264-1270.
Kimura E, Isogai S, Hitomi J. Integration of vascular systems between the brain and spinal cord in zebrafish. Dev Biol. 2015; 406: 40-51.
Hashiura T, Kimura E, Fujisawa S, Oikawa S, Nonaka S, Kurosaka D, Hitomi J. Live imaging of primary ocular vasculature formation in zebrafish. PLOS ONE; 2017; 12: e0176456.