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抗がん剤耐性がん細胞作成の方法を開発し特許出願

岩手医科大学薬学部医療薬科学講座薬物代謝動態学分野(幅野 渉 教授)の寺島 潤 講師の研究グループは、抗がん剤で死なないがん細胞、抗がん剤耐性がん細胞を人工的に作る技術を開発し、特許出願を行いました。がん患者の体内に抗がん剤耐性がん細胞が出現するケースは多く、がん治療を難しくしている原因の一つです。これまでは人工的に抗がん剤耐性がん細胞を作成し研究に用いるためには、遺伝子改変を伴う方法か、数ヶ月から1年以上培養を続ける方法しかありませんでした。

遺伝子改変を伴う方法は、生体内の抗がん剤耐性がん細胞と性質が変わってしまうことが多く、がん細胞全体の性質をトータルで研究するには向いていません。また、数ヶ月から1年以上培養を続ける方法は、あまりに長い時間を必要とするために研究計画が立てにくく、また獲得した抗がん剤耐性も不安定であることが欠点です。今回寺島講師の研究グループは、岩手県のいわて戦略研究開発推進事業の支援を受けて、従来の方法と比べて培養期間を10日程度に短縮し、遺伝子改変も必要がない方法を開発し、特許出願を行いました。

さらに、研究グループは培養細胞を使って3次元構造を持つ生体内の状態に近い細胞塊を構築し、培養細胞の性質を生体内の細胞に近づけた状態で抗がん剤耐性がん細胞を作ることに成功しました。さらに今回の技術を応用して、がんの再発、悪性化のカギを握っていると考えられているがん幹細胞の人工的な作成技術の開発に、岩手医科大学附属病院薬剤部の岩本佳幸薬剤師(現岩手医科大学大学院薬学研究科博士課程3年生、花巻北高校卒)が着手しています。

がんの悪性化、再発のカギを握る抗がん剤耐性がん細胞とがん幹細胞の人工的な作成技術によって、今後のがん研究の進展が期待できます。研究チームは今後この作製ステップを全自動化することによって細胞工学における新たな産業創出を目指しています。

 

<問い合わせ先>
岩手医科大学薬学部 医療薬科学講座薬物代謝動態学分野
講師 寺島 潤(てらしま じゅん)
電話:080-5572-4820
E-mail:jterashi@iwate-med.ac.jp