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令和4年度入学式 学長式辞

岩手医科大学医学部?歯学部?薬学部?看護学部に入学の284名の諸君、そして大学院博士課程?修士課程入学の28名の諸君、本日この日を迎えられまして誠におめでとうございます。諸君のご両親、ご親族の皆様方のお喜びはいかばかりかと推察いたします。誠におめでとうございます。

例年ですと、約2000人収容の岩手県民会館大ホールで、新入生諸君とご父兄、ご親族に参列いただいて式典を挙行するのが恒例でしたが、第6波?第7波とも言われる新型コロナウイルス感染症の蔓延により、急遽、新入生のみ出席として、ご父兄、ご親族の皆様にはウェブでご視聴いただく形になりました。

まず、医?歯?薬?看4学部の新入生諸君に、本学の歴史の概要をお話しします。北東北の医療が非常に貧困を極め、悲惨な状況であったことから、本学は明治30年、三田俊次郎先生が私財を投げ打ち私立岩手病院、そして4年後には岩手医学校となった医学講習所をつくられたことに始まります。三田先生が素晴らしいのは、医師のみで医療は成立しないと考えられ、現在でいう助産師と看護師の学校である産婆?看護婦学校を同時につくられたことです。東北?北海道で初のチーム医療が明治30年、まさにここで始まったのです。

本学はその後、日露戦争、第一次?第二次世界大戦という大きな戦争の時代を経て、しばらくは医学部のみの単科大学として運営してきましたが、昭和40年、東北?北海道で初となる歯学部を設立しました。その後、平成19年に薬学部、平成29年には本学創立120周年記念事業の一環として看護学部を設立しました。これによって医?歯?薬?看の4学部から成る、本学の悲願であった医療系総合大学として再スタートしたのです。

医?歯?薬?看4学部の学生諸君は矢巾の広いキャンパスで、講義棟にも見られるように学部の壁のない教育環境のもと、学生時代からチーム医療の根幹を涵養できるという非常に恵まれた環境で過ごすことになります。若い頃から大いに人脈をつくってもらいたいと思います。

本学の大きな特徴は、もう一つあります。医?歯?薬?看4学部の連携が教育のみでなく研究?診療にも及ぶこと、つまり総合的な教育?研究?診療体制を組んでいることです。今から2年8カ月前、矢巾の新附属病院が開院しました。新型コロナウイルス感染症が始まる4カ月前でした。1000床のベッドを持つ大病院は最新鋭の医療機器を備え、その中で優秀なスタッフが日夜、活躍しています。この病院は北東北における医療中核拠点であると同時に世界屈指の病院として、現在ほぼ毎日、満床に近い状況で機能しています。このように本学は、地域医療、チーム医療、さらに先進医療という3本柱で今後とも発展していきます。

先ほどお話しした三田俊次郎先生は「医療人たる前に誠の人間たれ」とお話しになりました。これが本学の学是となっていますが、非常に難しい言葉です。諸君が6年後、あるいは4年後に医療人となって医療の最前線に立ったとき、諸君の前にいらっしゃる患者さんとそのご家族は、身体を病み、それゆえに心を痛めて来られる方々です。諸君はその病み、痛みを理解して患者さんに寄り添う、心優しい医療人になっていただきたいと思います。それも、諸君が医療人になってからだけでなく、患者さんとご家族に接することになる学生時代から、その心を持って接していただきたい。今から準備が必要です。これこそが「医療人たる前に誠の人間たれ」という精神につながるものだと考えます。

大学院に入学した諸君に申し上げます。諸君は未知の世界、真理の追究をするため、そして指導者となるためにこの道を選ばれました。諸君の情熱と真摯な態度に敬意を表します。今日から諸君は新しい、未知の世界に入ります。この中で多くの困難もあろうかと思いますが、それを乗り越えて、当初の目的以上の成果をあげると同時に、多くの後進を育てるより大きな指導者となられることを期待しています。

全ての諸君に申し上げます。諸君は本学に入学したこの日を人生のスタートとして、諸君の心の中に描いている医療人、あるいは研究者?教育者としての夢をぜひ開花させていただきたい。そして、その夢をさらにつないで、より大輪の花として咲かせていただきたいと思います。また、諸君は小さい頃、いろいろなことに感動したことと思います。今日この入学式を契機としてもう一度、その頃の感動する心を取り戻していただきいただきたい。それは先ほど申した患者さんの病み、痛みをより速やかに察知する、感性の高い医療人になるための一つの重要なポイントであると考えるからです。

諸君はこれから長い医療人人生を歩んでいくことになります。今日はそのスタートとなります。将来、大いに活躍していただくことを期待して式辞といたします。本日は、誠におめでとうございました。

(令和4年4月12日 岩手県民会館)

岩手医科大学 学長 祖父江 憲治