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薬物代謝動態学分野

薬物代謝動態学では、内服、注射等で投与された薬物が、期待する薬効を現わすために作用部位に到達する過程を学びます。この過程を薬物の体内動態といいます。薬の効果や望まない副作用が現れるメカニズムにつき、薬の吸収、分布、代謝、排泄の過程を学習することを通じて理解することを目標にしています。

分野からのひとこと

小澤正吾 教授

小澤 正吾 教授

薬物代謝動態学分野の教員は、平成30年4月1日現在、教授:小澤正吾、准教授:幅野 渉、助教:寺島 潤の三名です。当分野の教員の願いを述べます。薬が体内に入ると、体の中を循環している血液に入って体の隅々まで届きます。循環している血液にのっている薬は肝臓を通り、元とは異なる形に変えられます。これを代謝といいます。薬によっては、もともと水に溶けやすく、代謝をうけることなく、腎臓経由で尿とともに体外に出ていくものもあります。薬学部で学ぶ人は、どういう形の薬が代謝を受けてから尿に混ざって排泄されるか、どういう形だと水に溶けやすくて代謝されずに排泄されるのか、判断できる感覚を身につけてほしいです。

分野の基本理念

薬を口からのんだ場合は肝臓を通るとき、形が変えられるものがかなりあります。形が変えられることを代謝と呼び、多くの場合、代謝によって薬の効果は失われます。肝臓での代謝を受けた後、薬は尿中、糞便中に排泄されます。この過程にはたくさんの段階があります。薬の服用後の肝臓での代謝をはじめ、生体はたくさんの働きを備えていて最終的に排泄に至ります。これらの働きにより薬の「代謝動態」が決まります。薬の「代謝動態」の能力は人により様々です。薬物代謝動態学分野の研究テーマの一つは、このメカニズムを明らかにすることです。薬の「代謝動態」の能力が非常に低い場合には、薬の効きすぎによる副作用の原因になりうるので、せっかく効果を求めて服用した薬の副作用に苦しめられてしまうことになります。その意味で、「薬物代謝動態」の個体差研究は薬物治療の上で非常に重要です。一方、服用の前後に摂った食物等によって、薬の効き方が変わる例は数多く知られています。現代の人間は、自分が吸う、あるいは周りの人が吸うタバコの煙、自動車の排気ガス、食品添加物、農薬等多くの化学物質に囲まれていますので、薬の効き方を変化させる化学物質の組み合わせは無限といっても言い過ぎではありません。組み合わせばかりでなく、これら化学物質を長い間摂取したときに現れる影響を調べることも必要です。ヒトの健康を守ることを念頭において、薬を始めとする化学物質の代謝動態の側面から教育ならびに研究を行いたいと考えています。難解とは思いますが、具体的な研究内容を次項にあげます。

主な研究内容

  1. 薬物代謝動態関連遺伝子の発現変動に関わるエピゲノムの役割
  2. 薬物代謝酵素とその関連分子のがん細胞恒常性、悪性化、抗がん剤耐性獲得における役割
  3. 抗がん薬などの効果を高める併用薬物の発見と効果を高める機構の解析